秋の夜長に満月と
ススキは秋の七草のひとつで秋に茎の先端にほうきのような白い穂をつけるのが特徴です。穂が白く見えるのは穎果(えいか)に白い毛が生えているためで、風に乗って種が遠くまで飛んでいけるように生えています。
ススキなどの茎に油分を含むイネ科の植物は茅と呼ばれ、耐水性の高い特徴から家屋の屋根や雨具などに活用されたり、家畜のえさや肥料として活用され、農村の集落の周辺には茅場と呼ばれるススキ草原が広がっていました。近代化に伴い徐々に茅場は少なくなってしまいましたが、今でも地名や苗字などにその名残をとどめています。
また、土地の遷移の観点ではススキは草原のほぼ最終段階に生えてくる植物とされ、そのまま放置しているとやがて樹木が侵入し森林へ変化していきます。そのためかつての茅場が放置された結果、雑木林になっている場所が多いそうです。
茅を生活の様々なものに利用する文化は都市部ではほとんど無くなってしまいましたが、中秋の名月にお団子にススキを飾りお月見をする風習はまだ多くの土地で残っています。最近は夜でも暑い日が多い9月になってしまいましたが、涼しい夜風に揺られるススキの穂と丸い満月を眺めながらお団子を食べる光景はいつまでも残していきたい日本の原風景です。