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生存戦略の最高到達点のひとつ

aphid
  • アブラムシ | Aphid
  • 植物の茎に密集して発生するアブラムシは見た目が気持ち悪く苦手な人も多いのではないでしょうか。そして植物に寄生し汁を吸うので農業や園芸をやる方にとっては害虫であり、アブラムシに関連するキーワードとして真っ先に駆除と出てくるほどとても身近でやっかいな存在です。
    少し見た目は異なりますが、同じく植物の汁を吸う昆虫であるカメムシの仲間に分類されています。カメムシとの大きな違いは、身を守る能力がとても低く、移動をほとんどしない点です。そのため、天敵であるテントウムシなどに簡単に食べられてしまいますが、爆発的な繁殖力とアリと共生するという戦略で種の保存を図っています。

    アリとの共生は有名な話ですが、アブラムシが吸う植物の汁には糖分が含まれていて、アブラムシの排泄物には余った糖分が含まれているので、アリに蜜(排泄物)を分けてあげる代わりに天敵となるテントウムシを追い払ってもらうという「共生」を行っています。これはお互いに利益のある「相利共生」と呼ばれ、アブラムシにアリが寄ってくるので、アブラムシは別名「アリマキ(蟻の牧場)」と呼ばれます。アブラムシはアリ以外にもう1種、ブフネラという細菌と相利共生関係にあり、アブラムシの細胞の中で暮らすブフネラはアブラムシが生きていくうえで欠かせないアミノ酸を作りアブラムシに供給しています。アブラムシはアミノ酸を食べ物から摂取できない一方で、ブフネラはアブラムシの細胞内でしか生きられないため、お互いに切っても切り離せない関係を2億年以上も続けているそうです。

    そして、アブラムシはメスが交尾をせずにひとりで子供を産むことができ(子供はすべてメス)、生まれた子供がまたすぐに同じように子供を産むので、あっという間に増えてしまいます。アブラムシが密集しているのは、ほとんど動き回らずにその場でどんどん子供を増やしていくからなんですね。
    しかし、密集度が高くなると翅を持つ子供が生れてきます。翅を持つ子供はふわりふわりとその場所から移動し、少し離れた新しい場所で再び一大コロニーを作り上げるということを繰り返し、いつでもどこにでもいる存在を維持しています。また、冬が近くなると翅のあるオスとメスが生まれ、交尾をして卵を産み、卵で越冬して次の春にまた爆発的に増殖するという生活を繰り返しています。
    必要な時に翅を持つ個体やオスを産み、あとはただひたすらポコポコと子供を産み続けるという高度なまでにシステム化された個体数を減らさない事に全力を注ぐアブラムシの生態は、約40億年前に始まったとされる生命の到達点の1つであると個人的には確信しています。おそらく、地球規模の寒冷や極暑も卵で休眠してやり過ごしてしまうのだと思います。

    aphid

    とあるコロニー
    密集度が高くて気持ち悪い

    aphid aphid

    アリがパトロールしてくれています

    aphid aphid

    テントウムシが近づいても逃げずに(逃げられない?)食べられるという使命を全うします

    aphid aphid

    翅のある個体
    新たなコロニーを作りに旅立ちます

    fuji