星の瞳
暖かさを感じる春の日に、道端に目を向けるとオオイヌノフグリの小さな青い瞳が陽光を浴びて開いています。多くの植物は冬は活動を抑えてじっと春が来るのを待ちますが、オオイヌノフグリは秋から冬にかけてゆっくり葉を茂らせ、暖かくなると花を咲かせ、熱い夏は種の状態で過ごします。年々太陽の日差しが強くなっている近年はオオイヌノフグリのような生活を送る植物の方が有利な環境へ近づいているのかもしれません。
オオイヌノフグリは直訳すると大きな犬の陰嚢という驚きの名前に注目されることが多いですが、イヌノフグリというよく似た植物に似ていて、それよりも少し大きいことから付けられた名前というだけで、直接的に犬のふぐりに似た特徴を持っているわけではありません(イヌノフグリの果実は本当に犬のふぐりに似ています)。「あれに似ているこれに似ているから」という理由でつけられた名前が不名誉な結果になってしまっているので、少し伝わりにくいかもしれませんが星の瞳という別名で呼んであげたい植物です。ただ、オオイヌノフグリの高い繁殖力がイヌノフグリの生育場所を奪い、結果的にイヌノフグリを見る機会が激減し(絶滅危惧Ⅱ種に指定されています)、オオイヌノフグリの方が有名になってしまっているのは自然のいたずらという気がしてなりません。